活動・お知らせ

地方創生 県内大学の取り組みに150人耳傾ける/ 秋田市で第12回日本海沿岸地域代表幹事サミット

 日本海沿岸の経済や文化の交流を目的にした「日本海沿岸地域経済同友会代表幹事サミットが」10月31日、秋田市の秋田キャッスルホテルで開かれた。「地方創生と大学の役割」をテーマに、堀井啓一・県副知事の基調講演に続き、秋田大学、秋田県立大学、秋田公立美術大学、国際教養大学の県内4国公立大学長が、それぞれの特色を生かした地域貢献の事例を発表するとともに、卒業生の大半が県外に流出する現状を訴えた。サミットには150人を超す経済同友会員が参加した。

第12回日本海沿岸地域経済同友会代表幹事サミット

小笠原直樹代表幹事あいさつ

 第12回日本海沿岸地域経済同友会代表幹事サミットをここ秋田市で開くことができて光栄だ。開催案内を出したところ、秋田を除く13の経済同友会からの参加者が100人を超え、秋田を加えると150人超、過去最高の参加者となった。ありがたく、心から感謝申し上げる。
 本日未明に首里城の火災があり正殿などを全焼、誠に残念だった。沖縄県民の落胆はいかばかりかと察する。また、このところの自然災害。台風15号から始まり19号、台風崩れの大雨など立て続けの災害で、関東、甲信越をはじめ、東北では福島、宮城、岩手の広範囲で、おびただしい被害となっている。被災者の皆さんの一日も早い生活再建、そしてまた、農家や深刻な打撃を受けた企業の再起を祈る。
「災害は忘れたころにやってくる」は寺田寅彦の警句だが、最近の天災は忘れたころばかりか、被害の全容がつかめないうち、復旧ままならぬうちに、次から次へと襲ってくる。異常なまでの気象になっている。また、こうした気候変動、異常気象は今後もさらに激しくなると予測される。こうした災害に備えて、われわれは生活を守り、企業活動に支障が及ばないよう全知を集めて対応策を考えていかなければならない。
 一方、世界政治の流れに目を向ければ、自国第一主義、優先主義を声高に主張する勢力、リーダーが各国で台頭し始めている。そのきしみ、ゆがみの中でテロ行為が頻発し民族の対立、地域間紛争を招いている。私は1951年生まれだが、21世紀はどんなに便利で平和な世の中になるのだろうと、子供のころ夢見ていた。確かに、科学技術は発展しているが、平和な世界については逆に暗澹たる気持ちになる現実がある。民族の対立、地域間紛争の中で、幾百万幾千万人の流浪の民が地球上をさまよっている。これにもわれわれは大きな関心を払っていかなければならない
 今回の代表幹事サミットに参加している日本海沿岸地域も例外ではない。米中貿易摩擦はエスカレートして互いのメンツをかけて世界経済の不安定要素になっている。また、米国と北朝鮮も硬軟織り交ぜた駆け引き外交によって、政治の不安定をもたらしている。さらに韓国と日本。これも1年前の徴用工判決を機に、過去最悪といわれるほど関係がこじれている。まさに「日本海、波高し」の状況といえる。
 しかしながら、かつての日本海は交易と交流の海だった。奈良時代には今の中国東北部にあった渤海国が日本に使節を送り、その使節はこの秋田から何度も上陸し、朝廷外交を繰り広げている。また、北前船が往来していた江戸時代から明治にかけては、経済交流が活発で日本海沿岸地域は生き生きと文化交流、経済交流をしていた。
 この日本海沿岸地域経済同友会代表幹事サミットの発足は12年前。対岸をにらんで、日本海に面する各道府県の経済同友会がもっと連携を深め、もっと結束して、日本海沿岸地域の経済、文化交流を活発化しようと立ち上げ、第1回大会を富山で開いたと聞いている。この流れをわれわれはしっかり受け止めて、日本海を対立と抗争の海にするよりは、もっともっと交易と交流の海にする努力を払い続けなければならない。いろいろな課題が目の前にあるが、それをこなして苦難を乗り越えるには、1にも2にも人づくりに尽きる。
 今回の日本海サミットでは、行動力、知識と見識、バイタリティーあふれる若者を、どうやって地域の中で育て上げ、地域の活性化を成し遂げようかということをテーマとした。「ふるさとの未来を拓く人づくり」を県勢発展の重要な柱にしている秋田県の堀井副知事から基調講演をいただき、その後に続くトークセッションでは、秋田県にある国公立の4年制大学である秋田大学、秋田県立大学、秋田公立美術大学、国際教養大学の4大学の各学長に登壇いただき、次代を担う人づくりに対して論議していただく。皆さまの経済同友会の日ごろの活動のヒントになることがたくさんあると思う。そんな発見を一つでも二つでも持ち帰っていただき、日ごろの経済同友会の活動に生かしていただければ幸いと祈念している。
 本日はお忙しいところ、ご参加いただき誠にありがとうございました。

堀井啓一・県副知事の基調講演

「ふるさとの未来を拓く人づくり」

堀井啓一秋田県副知事

 この度の台風15号、19号そして先般の大雨で被災した方々に、心からお見舞い申し上げる。また、沖縄・首里城の火災に対しては、沖縄経済同友会の皆さまに心からお見舞い申し上げる。
 改めまして、ようこそ秋田へ。はじめに少し秋田県の紹介。見どころとして今一番に挙げているのは世界中から愛される秋田犬。フィギュアスケートのザギトワ選手がかわいがっているし、秋田犬を見るために多くの人たちが秋田に来ている。秋田、日本を代表する犬として、これからも秋田のPRに頑張ってほしい。もう一つは昨年、ユネスコの無形文化遺産にも登録された「男鹿のナマハゲ」。秋田の冬を彩る伝統行事だ。
 一方、食文化の伝統も多い。代表する郷土料理として「きりたんぽ鍋」があり、男鹿の漁師が生んだ豪快な「石焼き料理」もある。そして、忘れてならないのは「秋田のお酒」。米の秋田は酒のくにであり、県内では35の蔵元が銘酒を醸造している。酒どころ兵庫や京都、新潟にも負けない自負がある。

 本日のテーマに移る。

Ⅰ 秋田県における人口減少抑制への取り組み

 秋田県の人口は昭和31年の135万人がピークだった。平成29年に100万人を割り、現在は96万5000人で昭和初期の数に戻っているともいえる。令和27年には60万人まで落ち込むといわれている。
 社会減の直近5年をみると、平成27年からは社会減が4,000人台で推移しているが、今年は4,000人を割り3,900人。県は第3期ふるさと秋田元気創造プランの目標に、人口の社会減抑制を掲げ、平成28年に4,100人、令和4年には半減の2,050人を目指しているが、目標には遠い。
 社会減抑制に向けては▽若者の県内定着▽都市から地方への流れの形成―の2つが目標。具体的には、県内企業170社以上と大学生等が参加した合同就職説明会を秋田市で開いたり、女子学生に県内で働く先輩女性社会人の体験談を伝える機会「あきた女子活交流会」を仙台市で開いたりしているほか、Aターン就職希望者と県内企業が個別面談する「Aターンフェアin東京」も開いている。さらに、県の移住相談員や先輩移住者が移住希望者の相談に乗る「JOINフェア」(東京ビッグサイト)への参加や、県の就活情報サイト「Kocchake!(こっちゃけ!)」で、秋田で暮らし・働くことを呼び掛けたり、「あきた回帰キャンペーン」の動画を流したりしている。
 一方、人口の自然減対策としては▽子どもを産み育てやすい地域の形成▽交流人口・関係人口の拡大▽地域共生社会の実現―を掲げている。具体的には結婚支援センターの設置・運営、多子世帯の学生への奨学金貸与などに加え、地域ぐるみで子育てをする環境を築くために整備した子育て支援多世代交流館の設置、全国トップクラスの子供1人当たりの保育料助成額、ことし10月からの幼児教育無償化に伴う副食費助成などきめ細かな対策をしている。
 交流人口の拡大に向けては、台湾定期チャーター便を開設し、台湾からの旅行者をナマハゲが秋田空港で出迎えている。また、国際教養大学の留学生たちは、秋田を離れても秋田に関する情報を発信しており波及効果が期待されている。県人会などの協力を得ながら、各地で「関係人口会議」も開いている。
 秋田県は「健康長寿日本一」を目指し、県民が適正な生活習慣の実践や特定健診・がん検診の受診等の健康づくりに取り組む県民運動を展開している。また、人口減少や高齢化が進み生活サービスの確保が困難な集落が増えているため、生活に必要なサービス機能の維持・確保が必要になる。高齢者等が療養や介護が必要になっても、住み慣れた地域で生活を続けることができるよう、日常生活に必要な医療、介護、介護予防、住まい、生活支援のサービスを利用者のニーズに合わせて、一体的に切れ目なく提供する体制「地域包括ケアシステム」を目指している。

Ⅱ 産業・交流の活性化による若者の定着

 5つの分野の産業の活性化をこれからの重点的な課題と考えている。県内の大学の協力も得ながら活性化を進め、高校、大学等の卒業生に一人でも多く県内産業に従事してもらい持続可能な社会をつくっていきたい。5つの産業の振興は秋田県はもちろん、日本全体が抱える課題にも向き合っていると思っている。

1 農林水産業の振興による食糧自給率の向上
(1)各都道府県の食糧自給率の状況
   カロリーベースでみると、本県は北海道に続き2番目の188%。山形や青森、新潟など日本海沿岸地域は比較的高い。これをさらに高めていくことが大切だ。
(2)秋田県の農業産出額の推移
   「米依存からの脱却」を掲げ、平成22年度、独自の農林基金を創設。収益性の高い複合型生産構造への転換を推進している。以後、園芸メガ団地等の生産拠点の整備、日本一を目指した産地づくりが進み、米以外の産出額が拡大している。
(3)園芸メガ団地の全県展開
   平成30年度までに26地区が着手し、令和元年度は新たに5地区で実施。52人の新規就農者が参画するなど、若い就農者の受け皿としても機能している。
   男鹿市五里合地区では2法人が連携してネギ、横手市十五野地区ではホウレンソウと農業用ドームハウスを活用した菌床シイタケ、秋田市雄和平沢地区では色鮮やかなダリアの大規模生産に取り組んでいる。
(4)秋田県の全国トップブランド作物
   長ネギと枝豆、菌床シイタケ、ダリアなど。
(5)農林水産業の担い手確保
   男鹿メガ団地では若手の農業者が育っているし、林業大学校では林業のトップランナーを育成。また、頼もしいベテラン農業者たちが地域農業を支えている。
(6)スマート農業の推進
   大仙市協和地区では、直進アシスト機能付き田植え機やラジコン草刈り機を導入しているほか、男鹿・潟上地区ではキク用収穫機を使用している。また、県立大や県農試などが連携し、自動操舵田植え機の軽労化・高能率化と水質汚濁低減効果の実証実験のほか、パワーアシストスーツの実証実験も行っている。
(7)水稲極良食味新品種(プレミア米)の開発
   県産米のフラグシップとなる極良食味新品種候補を「秋系821」に決定し、令和4年度の市場デビューを目指している。また、県立大などと連携し、難消化性デンプン米の共同開発も行っている。「あきたぱらり」「あきたさらり」の名称で、平成31年1月に品種登録を出願した。

2 日本海沿岸地域におけるサプライチェーンの形成
(1)秋田県の製造品出荷額等の状況
   製造品出荷額等は東日本大震災後、落ち込んだものの平成29年は東北トップの伸び率を示した。業種別では電子部品・デバイス産業が30.3%と本県のリーディング産業となっている。 
(2)サプライチェーンのリダンダンシーの確保
   平成29年9月に竣工したTDK秋田の本荘工場は、TDKの電子部品製造のグローバル・マザー拠点である秋田地区のものづくりを強化している。
(3)成長分野をはじめとした企業誘致の推進
   全国トップレベルの助成制度を活用し、企業誘致を加速化している。トヨタグループの大橋鉄工秋田が平成29年2月に工場生産を開始したほか、ジェイテクトIT開発センター秋田、オロテックス秋田も進出してくる。
(4)アスターの取り組み及び県の支援
   横手市にあるアスターは高効率モーターの実現に寄与する成形コイルの開発に成功。モーター用コイルの量産受注に向け工場を建設。県が量産用生産設備の整備を支援している。
   少子高齢化、人口流出と日本一厳しい社会課題を抱える本県に、若者に夢を与え、引き付ける将来産業と、それによる創造的高度人材が活躍する場を創出している。
(5)IT・情報サービス産業の企業誘致促進
   住友商事グループの「SCSKニアショアシステムズ」は令和2年4月に操業開始予定。アニメ企業「GAKIpro Astudio」はクリエーターを輩出する秋田公立美大に着目、人材を確保できそうと秋田への進出を決定した。
(6)ものづくり人材の育成
   「あきたクルマ塾」はトヨタの生産現場の第一線で活躍したОBを招聘し、県内企業の中堅社員を対象に将来の自動車産業を担う中核人材の育成を図っている。

3 再生可能エネルギーの導入拡大
(1)風力発電
   本県の風力発電量は約371㎿で、青森県に次いで2番目。2014~2016年度の(単年度での)設備導入量が3年連続全国1位となった。
(2)洋上風力発電
   八峰能代沖18万kW、能代港内10万kW、秋田県北部沖45.5kW、秋田港内7万kW、由利本荘市沖100万kWが計画されている。
  国は令和元年7月、今後の促進区域の指定に向けて、既に準備段階に進んでいる11区域を整理。このうち秋田県の4区域については、協議会の組織等の準備を直ちに開始する有望な区域とされた。
   また、風力発電メンテナンス人材育成プロジェクトとして、工業高校で電気主任技術者出前講座を開いているほか、令和2年度には秋田大学と秋田県立大で、学生ならびに社会人向けの風力発電に関する講座を開設する。
(3)地熱発電
   山葵沢地熱発電所が令和元年5月、23年ぶりに国内で出力10,000kW以上の大規模発電所として運転を開始した。純国産の再生可能エネルギーである地熱資源を発電に利用することで、わが国におけるCО2排出量の抑制と電力の安定供給に貢献している。
(4)バイオマス発電
   平成25年10月、「ユナイテッドリニューアブルエナジー」は燃料の70%が本県産未利用材(林地残材)を活用するバイオマス発電事業を開始。県内林業の活性化、発電所やチップ工場の建設・操業・運送業務等における新たな雇用を創出するなど、地域経済に貢献している。

4 日本海沿岸地域が連携した観光交流の推進
 (1)北前船
    北海道から青森、秋田、鳥取、島根まで、北前船寄港地・船主集落(日本遺産)が連携して、観光交流の拡大に努めたい。JR五能線を経由して奥羽本線の秋田―弘前・青森間で運行されている「リゾートしらかみ」は人気を得ている。
 (2)台湾定期チャーター便
    今年3月30日、秋田空港に台湾定期チャーター便が就航した。台湾の人には角館の武家屋敷や秋田内陸鉄道、森吉山の樹氷、乳頭温泉などが人気のコンテンツになっている。
 (3)クルーズ船
    本県へのクルーズ船寄港回数は増加傾向にあり、本年度は過去最高の28回の予定。全国初のクルーズ列車を運行、JR秋田駅からの県内周遊を促進する。
 (4)あきた発酵ツーリズム
    日本酒や醤油、みそ、納豆など秋田は発酵食文化が盛ん。これらを体験する旅行を進めている。具体的には酒蔵見学やみそ玉づくりの体験など。
 (5)DMO秋田犬ツーリズム
    日本版DMO法人「秋田犬ツーリズム」作成のモフモフ動画は世界中で話題になった。
 (6)インバウンドの拡大
    国際教養大学や秋田大学の留学生の意見をインバウンド拡大に生かすため、モニターツアーなどを実施している。
    なお、日本海側の鉄道ネットワーク、高速道路網は脆弱だ。日本海国土軸形成のためにも、待ったなしの課題になっている。

5 地域共生社会の形成
   地域社会の維持のためには①医療・福祉②保育・教育③防災・減災④地域運営―の4分野が不可欠。この4分野を産業化し、若者の就業の場とすることによって持続可能な地域共生社会の形成が可能と考える。
   ①について、高齢者等が療養や介護が必要になっても、住み慣れた地域で生活を続けることができるよう、日常生活に必要な医療、介護、介護予防、住まい、生活支援のサービスを利用者のニーズに合わせて、一体的に切れ目なく提供する体制「地域包括ケアシステム」を確立しなければならない。
   これまで、認知症の早期発見、危険因子の解明および診断する血液バイオマーカーの技術を目指す研究や、県内の若年性痴呆症の有病率調査、認知症にかかわる地域課題の調査・分析などを行っている。
   ④について、将来人口の予測結果を示しながら具体的な目標設定に向けて話し合うワークショップを開くなど、コミュニティ生活圏の形成を検討している。

Ⅲ 多様性に富んだ持続可能な社会を担う人材の育成

1 地域人材育成・県内定着を促進する秋田県立大学
   地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(CОC+)を実施、若者の地元定着を促進するため、秋田大学を中心に県内6大学と経済団体等が連携している。また、秋田を題材として地域の実情を知り、地域課題の解決策を考える人材を育成する「あきた地域学課程」を導入している。

2 企業・教育関係者から高く評価される国際教養大学
   グローバル人材育成で高く評価されている。特色は▽すべて英語による少人数授業▽世界各地からの留学生とともに暮らす寮生活▽1年間の海外留学の義務付け―など。

3 県内大学における地域貢献
   秋田大学は長寿・健康研究教育拠点形成に向けた取り組み、県立大学はICTを活用したスマート農業の実用化、国際教養大学は世界展開を目指す企業人材の育成、公立美大はアートによる地域おこし―などがある。

4 持続可能な地域社会づくりを担う人材の育成
  秋田の未来を切り拓く若者のさまざまな挑戦を支援する「あきた若者プロジェクト」が本年度スタートした。第1弾は若者ならではの斬新なアイデアを支援する「若者チャレンジ応援事業」、第2弾は高校生等の地域宿里活動を支援し社会参加を促進する「若者と地域をつなぐプロジェクト事業」。
  「若者チャレンジ応援事業」は、対象が18歳から39歳までの個人または団体(高校生および企業は除く)。最長3年間で最大400万円の支援のほか、各分野の専門家の助言や県各部局もバックアップする。ことしは7つの取り組みが対象となった。
  「若者と地域をつなぐプロジェクト事業」は、対象が2人以上の高校生グループ。企画の実現に必要な活動費支援のほか、地域の頼れる大人による支援も受けられる。10校から12グループ、54人の応募があり、現在は実践活動に向け準備中。高校の枠を超えた合同文化祭開催や、空き店舗を活用したみんなの居場所づくりなど、秋田を元気にするさまざまなアイデアが出された。
  若い人を中心にみんなが生き生きと頑張る地域でないと、これからの社会を持続可能なものにすることは難しい。こうした意味で、新潟の長岡藩・小林虎三郎「米百俵」に学ぶ。この精神を秋田においても大切にしたい。また、秋田には農聖・石川理紀之がいる。「寝ていて人を起こすことなかれ」という言葉は教育に期待するということであり、私たちが率先して地域がこれからも持続できるような取り組みをしていくことが大切だ。ご清聴ありがとうございました。

トークセッション

「地方創生と大学の役割」

4大学学長によるトークセッション

<モデレーター・石塚真人さん>

モデレーター石塚真人氏

 日本海側はかつて、江戸から明治・大正・昭和と「北前船」の寄港地として栄えた。船は物産の交易のみならず、文化の伝承の海の道でもあった。青森の民謡「津軽あいや節」のルーツは、熊本の「牛深はいや節」だといわれている。新潟の「佐渡おけさ」も同じルーツだ。
 日本海側は「裏日本」など、ある意味差別的な表現が横行する時代もあった。確かに冬の雪など自然条件が厳しく、交通体系の整備が遅れている。しかし、それは逆に四季がはっきりしていて手つかずの自然が多く残されているということでもあり、これからインバウンドなどでは大きなポテンシャルとなる。
 とはいえ、戦後経済発展からやや取り残され、人材の供給基地として人口の流出がいち早く進んだことも事実。中でも秋田はそのトップを走り続けている。それに歯止めをかけるためには、若者が安心して生活でき、自己実現の可能性に富んだ仕事があることが最も大事だということは、堀井副知事が基調講演でも強調していた。トヨタの開発部門の一翼を担う「J-TECT」の秋田進出は、とても興味深い示唆を与えてくれた。
 昨年のデータでは、秋田県内の高校を卒業した生徒は8,300人余り。その約30%が就職し、大学等への進学率は約45%、専門学校等へ進んだ人が17%だった。5000人余りの進学者のうち70%近くが県外へ出ている。一方、県内の大学で自分の夢を実現するために専門知識や技術を学ぼうと、全国から集まる若者もいる。秋田県内の進学者も含めて、その数はおよそ1万人。彼らのうち一人でも多くの人たちに卒業後、あるいは何年か県外や世界で活躍してからでも結構。陰に陽に、秋田を支える人材になってもらうことは、県外に進学した若者のUターンや移住者を増やすことと並んで秋田県の最重要課題だ。
 秋田大学、秋田県立大学、秋田公立美術大学、国際教養大学をはじめ、県内にある大学や高等専門学校などは、そのことに強い関心をもって取り組んでいる。設立の理念や専門分野に特徴をもつ4国公立大学の学長に取り組みを紹介してもらう。

 各大学の取り組みは以下の通り。

<秋田大学 山本文雄学長>

「秋田大学における地域連携・貢献の取組紹介~医学部附属病院を中心に~」

秋田大学学長山本文雄氏

1.秋田大学の基本理念と沿革
 基本理念は①国際的な水準の教育・研究の遂行②地域の振興と地球規模の課題解決への寄与③国内外で活躍する有為な人材の育成。昭和24年、新制大学として学芸学部と鉱山学部の2学部で発足したが、両学部とも前身は明治時代からの歴史がある。昭和45年医学部を併設し、改組等を経て現在は国際資源学部、教育文化学部、医学部、理工学部の4学部と大学院4研究科体制。地域に貢献するため、平成28年に地方創生センターを設立、地域協働・防災部門と地域産業研究部門の2部門を設けている。特に地域産業研究部門では医理工連携産業研究開発など5事業を展開。
 
2.医学部附属病院の地域貢献
 入院18万人、外来25万人(平成30年度)、県内外各地域から患者を受け入れ秋田県の中核病院機能を果たし、地域医療患者支援センター・がん相談支援センター等を設置。県の補助で全国に先駆けて整備し、充実度もトップクラスのシミュレーション教育センターは、専門医や研修医、医学生や県内医療従事者のほか中高生も利用可能で、ほとんどの医療行為のシミュレーションが可能。

3.医理工連携の取り組み
 平成26年に医理工連携”夢を語る会”を発足。医学部、理工学部の教員、附属病院の看護師をはじめとした医療スタッフのほか、金融機関、秋田県、公設試験機関、さらに県内企業などの方々が一堂に会し、日常の医療現場での問題点を紹介。それぞれの分野の特殊な技術や研究による解決に向け定期的に話し合っている。このような取組をきっかけとした技術開発や製品化等を目指している。秋田大学発の「電子タグによるベッドサイド安全管理システム」は平成19年度総務省u-Japan大賞を受賞。また、秋田大学、東京工業大学、秋田県医師会との3者間連携では、①高齢者診断・医療の提供に関する研究開発②高齢者支援システムに関する研究開発③長寿・健康増進に関する研究開発を柱に、長寿・健康研究教育拠点の形成に取り組んでいる。脊髄損傷や脳卒中によりマヒした手足をいかに効率よくリハビリを行うか研究成果を基に、リハビリロボットや血栓形成予防機器、呼吸訓練機器などの共同開発の研究も行っている。
 医療機関は本来の医療活動に加え、さまざまな仕事が課せられ、医療スタッフは慢性的な過重労働にさらされている。そこで秋田大学は業務の簡略化とミス防止を目的に、患者と看護師、薬剤を認証し、電子カルテの指示と照合する医療従事者支援モデルシステム実証実験や、超小型電子タグを利用した服薬管理なども研究している。

4.少子高齢化日本一の秋田における課題解決の取り組み
 秋田県の重要課題である少子高齢化と地域医療体制の維持は、わが国の未来の縮図。それに早期に対応するため秋田大学と秋田県、秋田県医師会の三位一体の取り組みとして平成30年、県の補助で秋田大学に高齢者医療先端研究センターを開設。①高齢者医療、特に認知症の原因・治療・予防の研究②地域社会学から見た高齢者医療のあり方③産学連携による高齢者にやさしい地域づくりを推進している。特に、認知症初期の患者を例にとれば、早期で正確な診断の確立に始まり、進行を止める治療の開発、さらにそうした患者のケアをいかに進めるべきか、地域の皆が見守りながらその家族への支援を含め真摯に協力する体制の確立、またその地域の高齢者がより元気に生活するための方策、運動能力向上のための対策、そうした活動を把握するための体制を確立し、データを収集。ビッグデータ化し解析、応用することをめざしている。
 秋田大学がめざすゴールは「生活を支える医療の知の拠点」。秋田県の健康課題を解決すべく全学的にさまざまな教育研究を行い、その成果をフィードバックし、高齢者が元気で幸せに安心して暮らせる社会の実現。秋田に行けば楽しく安心できる生活が保障されると言われるのが目標だ。

<秋田県立大学 小林淳一学長>

「人口減少をはじめとする県の重点課題対策支援ならびに大学の特色ある教育・研究について」

秋田県立大学学長小林淳一氏

1.秋田県立大学の概要
 平成11年4月に開学、ことし開学20周年を迎えた。大学の基本理念は2つあり、1つは21世紀を担う次代の人材育成であり、もう一つは開かれた大学として、秋田県の持続的発展に貢献すること。具体的には、Society5.0社会に対応した人材育成であり、地方創生の推進役を担う。
 工学系と農学系の二つの学部と附置研究所を持つ理工系の大学であり、工学系はTDKと関連の中小企業、農学系は県の基幹産業である農業を支える。さらに、木材高度加工研究所もあり、農工連携教育、研究を行っていることが特徴。本荘、秋田、大潟、木材高度加工研究所の4キャンパスがあり、それぞれ地元と密接な関係にある。

2.第3期中期計画に沿った特徴ある新たな取り組み
 昨年度スタートした第3期中期計画は①県内出身学生の確保②卒業生の県内定着の促進③県内産業の振興に向けた支援―の3つを柱としている。
 具体的には、①は高校のニーズにこたえる取り組みとしてSGH、SSH等への指導協力や県内各高校への出張講義・出前講座への教員派遣、大学施設見学・キャンパス見学会の受け入れを行っている。また、本学から高校へのアプローチとしては学長・副学長による県内高校訪問に加え、高校長経験者の進学推進員による高校訪問を行っている。さらに、特徴的な取り組みとしては▽学生アンバサダーによる母校訪問▽高大接続塾ハイレベル講座の開講▽「毎週土曜日は秋田県立大学の日」の実施―も挙げることができる。
 入学当初は100人余が県内就職を希望するが、卒業時には60人程度まで減ってしまう。このため、②の対策として、1、2年生を対象にした県内企業における一日インターンシップである「ジョブシャドウイング」がある。職場見学や社長に経営や将来の夢を語ってもらうことで企業への理解を深めてもらう。
 さらに、「ジョブシャドウイング」の前段として、秋田を知るための「あきた地域学課程」を実施している。1年生全員が地域の実情を把握し、それぞれの地域の課題を抱えている問題点を明らかにすることで問題意識を持つことを学ぶ。その後、2、3年生の希望者は地域の課題に能動的に取り組み、解決策の策定や新たな提案を行うコースに進む。さらに、卒業研究にするなど、解決策や提案を実践し、地域住民とともに目に見える形にして地域に還元する学生もいる。
 あきた地域学課程で地域に対する理解を深め、ジョブシャドウイングで職業観を形成、3、4年でインターンシップを経験し、県内就職者の増加を図っている。
 ③の県の重点課題解決に向けた大学独自の新たな取り組みの一つはスマート農業。これは秋田を支えるための農業の強化。日本有数の規模を誇る大潟キャンパスの圃場(190ha)を活用し、スマート農業実現に向けて、農工連携に関する研究・技術研修・技術導入支援等を実現するための次世代農工連携拠点センターを整備している。もう一つは風力発電事業。秋田県は資源立国として歴史を刻んできた。今後は風資源を生かした地域振興、秋田サスティナブル社会(SDGs)の実現を目指すために必要な課題を大学、自治体、企業、銀行による連携で解決する。

3.大学の特色ある教育・研究
 成長のための教育とはトリガーを与えることであり、成功体験を積み重ねること。そのために体験メニューを数多く提供し、その場面に入るよう学生の背中を押す。後は学生が自分で考えればいい。本学は学生と教職員の距離が近く、学生個人に合わせたきめ細かな指導ができる。学生はチャレンジし、目的が達成されると成功体験を肌で感じ自信を持つ。正のスパイラルを生み、成功体験の積み重ねを経験させることが大事だ。
 具体的な例としては低カリウム野菜など機能性野菜やダイエット米(難消化性デンプン)の研究がある。低カリウム野菜の栽培方法の確立と特許化は溶液環境制御技術を用いた。ダイエット米の研究では、デンプンをつくっているのは酵素であり、関与する酵素をすべて特定。多くの変異体を調べる中から難消化性デンプンを抽出した。

<秋田公立美術大学 霜鳥秋則学長>

「秋田公立美術大学の地域連携」

秋田公立美術大学学長霜鳥秋則氏

1 大学の概要と理念
 美術学部と大学院(複合芸術専攻)があり、大学は1学年100人。県外生が75%、女子が80%となっている。①新しい芸術領域を創造し、挑戦する②秋田の伝統・文化をいかし発展させる③秋田から世界へ発信するグローバル人材を育成する④まちづくりに貢献し、地域社会とともに歩む―の4つが大学の理念であり、②と④でトークセッションのテーマでもある地域連携をうたっている。

2 地域連携の取り組み
 (1)  産学官連携を取りまとめるのが、昨年2月に設立した「NPO法人ア-ツセンターあきた」。これまで先生たち個々に依頼されていた案件が一本化されるなどのメリットもある。高校生を対象とした公募企画「U18クリエイティブキャンプ」や大森山動物園アートプロジェクトなど、「まちに驚きと発見を生み出す」取り組みをしている。

(2) 昨年4月、産学連携を通じた地域の持続的発展と人材育成に関する連携協定を東日本旅客鉄道秋田支社と締結。内容は▽駅を中心としてまちづくりに関する事項▽沿線の活性化に関する事項▽授業演習・共同研究に関する事項―など。

(3) JR秋田駅を中心にした中心市街地において、行政・大学・地元企業が連携し駅、自由通路、待合ラウンジなどを県産材による統一したデザインで木質化する取り組み「ノーザンステーションゲート秋田」が昨年12月、「ウッドデザイン2017最優秀賞」を受賞した。

(4) 公共施設等の未利用空間を新たな情報発信の場と位置づけ、魅力ある空間づくりを目指し、秋田空港ターミナルビルと協働して、秋田空港で昨年度から作品を展示している。

(5) 大森山ア-トプロジェクトとして、大森山動物園内だけでなく、大森山公園全体を開催エリアに拡大しているほか、工作ワークショップや彫刻の森ガイドツアーなどを開催している。

(6) 空き家レジデンスプロジェクトとして、社会問題になっている空き家に芸術の視点からアプローチ。工房機能が持てる空き家、宿泊可能な空き家など、新たな活用法を探っている。

(7) 人が表現することの根源性や多様性から学び、自らの制作につなげる取り組み「つちのあかりプロジェクト」。地元の人たちと一緒に、障がいのある人、ない人、子ども、大人が集い、ともに楽しく表現の根源を学んでいる。

(8) FISフリースタイルスキーワールドカップ秋田大会のポスター、秋田県医師会ロゴマーク、秋田市産枝豆PR用タグ、雄物川改修事業100周年ロゴマークなど、各種デザインの制作にもかかわっている。

<国際教養大学 鈴木典比古学長>

「世界に通用するリベラルアーツ教育を目指して」

国際教養大学学長鈴木典比古氏

◆AIUのプログラム―ダブルアセンブリーライン方式
 大学では一般的に、1年から4年までかけて一貫した教育を行うが、AIUはダブルアセンブリーライン方式を取っている。すべての授業は英語。1、2年は秋田キャンパスで授業を受け、3年になると全員が1年間、海外に留学する。卒業までに124単位が必要だが、その4分の1に当たる30単位を海外で取得し持ち帰らなければならないため、なかなか難しい。世界50カ国の200大学と協定を結んでいる。留学先はアメリカ、アジア、ヨーロッパが各3分の1。1学年175人で、留学先から戻り4年になって戻り就職活動。非常に忙しい4年間を過ごす。卒業要件は124単位、GPA2.0以上、TOEFL600を目指す。
 ダブルアセンブリーライン方式のため3年生がいない状況になるので、そこに同数の海外からの留学生を200人ほど受け入れている。世界基準のカリキュラムでなければ、この方式はできない。

◆2021年度からの新カリキュラム
 現在は国際教養学部にグローバル・ビジネス課程とグローバル・スタディズ課程を設けているが、2021年度からはグローバル・コネクティビティ領域が加わる。2年後には国際教養学部に国際教養学科3領域という形になる。
 3領域は重なる部分もあり、より多彩な学びが可能になり、われわれが目指すリベラルアーツをカリキュラムで表現したことになる。

◆AIUが目指す国際教養教育
 本学では▽個人が習慣・束縛・偏見から自分を解き放ち、新たな自分を構築していく▽「自分の自分による自分のための」学び―と定義している。留学してこれを世界的な場で身に着けることが国際教養教育と考える。教育観としては、受け身の学びから主体的な学びへと展開していかなければならない。

◆数字で見る国際教養大学
 英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)の日本の大学ランキングの2019年版では、国際教養大学が総合で10位。教育充実度と国際性では1位にランク付けされている。

◆地方創生と国際教養大学
 国際教養大学の目指すところは、大学が有する教育資源や人的資源を活用し、多様な研修と交流機会の創出および提供を通じて、秋田県における地域活性化や異文化理解の促進に寄与することで、常に秋田県のことを考えている。大学の強みは▽英語を中心とする外国語教育のメソッド▽国内外から集まる人的資源の多様性▽学外団体等とのさまざまな連携・教育関係。
 また、AIUが県内企業等に積極的かつ直接かかわる新たな学びの場として「研究と実践の場」(AIUデザインLAB)を創出。学生と県内企業との協働による課題解決と新しい価値の創造を目指している。ここに海外からの留学生が積極的に加わっている。
 本学の学生は卒業すると基本的には世界に散らばっていき、世界で活躍している学生が大半。しかし、県内にとどまって起業する学生もいる。好例はプロバスケットボールチーム「秋田ノーザンハピネッツ」を立ち上げた第1期生の水野勇気社長。全国各都道府県から集まった学生が秋田で学び、世界に飛び立っていくことが本学の特徴だ。

<モデレーター>

◇県内の小中学生の教育レベルは全国トップクラス。支えているのは秋田師範をルーツとする秋田大学ではないか。

<秋田大 山本学長>

 学芸学部に始まった教育文化学部は一つのブランド。県内教員の50%以上が教育文化学部の出身者であり、学生を育てる大学の指導方法は実習を多くするなどユニークな取り組みだ。
 大学には3つの分校があるが、横手分校では「秋田ミニミニ教師体験」として、高校生に小学生を教える体験をさせている。これを機に、高校生に先生になりたいという気持ちを植え付けることができ、それまで学力が届かなかった生徒も大学入学に向け一生懸命に勉強するという例もある。このような学生が増えることで学部のレベルが上がるし、先生たちは学生を育て上げようと秋田ブランド的な教育をしようと頑張っている。

<モデレーター>

◇風資源の活用について追加することは?

<県立大 小林学長>

 秋田県は資源に頼ってばかりでいいのかということはあるが、少なくとも洋上風力に取り組むことは大きなビジネスチャンス。ただし、外部資本で利益が持っていかれるようでは意味がない。風力発電産業が地元にどう貢献するかという観点から考えている。洋上風力は地元資本だけではできない。地元がどうリーダーシップを取るか企業が一生懸命考えている状況だ。
 風力は安定しないエネルギー。それをいかに安定したエネルギーに変換するか。具体的にバッテリーもあるが、水素化して水素社会という見方もある。また、メンテナンス事業はビジネスそのものが簡単に地元に落ちてくるものではない。握っている大手メーカーに受け入れられる環境づくりが必要。課題は多いが大学としてはこのビッグチャンスを生かしたい考え、企業と一緒に技術開発に取り組んでいる。

<モデレーター>

◇アニメ制作会社の設立、増田まんが美術館のにぎわいなど、アニメや漫画とのかかわりはどうか。

<公立美大 霜鳥学長>

 漫画やアニメは若い人、学生にも人気のある文化。アニメにかかわれることはうれしいし、まんが美術館のにぎわいはわれわれの動きを前向きにしてくれるのでありがたい。アニメの背景画を制作している会社が秋田市に進出する。来年4月から9人のスタッフでスタート、このうち4人が美大の卒業生だ。美大の存在が進出の大きな要素になった。学生が人気の業種・企業に就職できるし、秋田に残るということはとてもありがたいし、これをきっかけに秋田が発展していくことを望んでいる。

<モデレーター>

◇ノーザンハピネッツ水野社長のほかの事例、秋田にかかわる人材はいるか。

<教養大 鈴木学長>

 県外の企業に就職する学生が大半だが、竿燈まつりや田植え、稲刈りには留学生が積極的に参加しており、活動を通じて秋田に愛着を持っている。このような人たちは自分の仕事で秋田を使って何かできないかと考えている。大手旅行会社に就職した卒業生は、インバウンド商品に秋田を組み入れることができないかと相談に来ることもあるし、または自ら旅行会社を興している卒業生もいる。開学して15年。10年ほど都会で勤め、そろそろ秋田に戻りたい、または秋田にかかわる仕事をしたいと、県外出身者が秋田に戻っている。地域おこし協力隊も増えており、頼もしい流れがある。世界に貢献する学生を育成しているが、秋田から世界に貢献するという流れも少しずつ出ている。
 一方、会場からは ①国際教養大学は全国の精鋭が集まり、極めて優秀な学生を育成する素晴らしい大学だと認識しているが、その教育方針の最大の特徴は? ②卒業後秋田県に留まる学生の割合はどれくらいか ③少子化・人口減少が進むなか、秋田の地方創生に寄与する学生に対して、資金援助や税制免除等、留まることへの優遇制度等の工夫は? ―の質問が寄せられた。

①教育方針の特徴は?
 英語を学ぶのではなく、英語で考え、英語で意見を言い、英語で協調できるようにすることが目的。学生の80%が寮生活など学内にいるので24時間英語漬けで、図書館も24時間、365日開いている。秋田にいながら異文化体験ができ、生活面でも国際感覚を養うことができる。

②県内に留まる学生の数は?
 国際教養大学   10人程度で、10%に達していない
 秋田大学     国際資源学部は10%未満、医学部40%、教育文化学部70数%
          理工学部は20%で、中央と県内の給与格差、大企業がないことが
          ネックになっている
 秋田県立大学   農学系30%強、工学系10数%で、合わせて22、23%
 秋田公立美術大学 美大は全国区であり20%

③資金援助や税制免除など、留まることへの優遇制度はあるか
 秋田県は中央大学など全国22校と協定を結び、県内企業の情報を流したり就職説明会を開いたりしている。また、県内に就職した学生には最大60万円の奨学金返還助成を実施している。この2年、各500人程度が助成を受けている。

<モデレーター>

 「地方創生と大学の役割」というテーマの答えは一つではないにしろ、日本海側という共通の条件にある都道府県には秋田県と同じような課題、思いを抱いている方も少なくないのではないでしょうか。きょうのトークセッションで出された熱いメッセージが少しでも皆さまの胸に刻まれたならば幸いです。

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