代表幹事・佐川 博之
令和8年度通常会員総会の開会にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
米国のベネズエラ攻撃で幕を開けた2026年は、戦火が下火になるどころか中東にまで拡大し、ロシア・ウクライナ戦争を含め、地球全体がきな臭さに覆われております。中東情勢の悪化に伴い原油の調達が滞り、企業の生産活動のみならず、物流や、市民生活にも多大な影響を与えています。会員の皆さまが所属される企業や団体も、直接、間接的なご苦労が絶えないことと存じます。国際ルールを無視した大国の行動に対し、多くの国が不信感を覚え、不満を募らせています。
ネット空間に流れる膨大な情報の波に飲み込まれるかのように、米国では小規模な地方新聞社が次々に姿を消し、地元報道が乏しいいわゆる「ニュース砂漠」が広がっています。権力の監視役の存在が消えつつある米国で今、何が起きているのか。それはこの国の最高権力者の言動、振る舞いを考えてみれば、答えは自明です。
ルールに則った行動なくして、世の中の秩序は保てません。都合の悪いニュースはフェイクだと切り捨て、自らがSNSで発信する情報こそが正しい、という思い上がり。これは人々の感情や行動を特定の方向に誘導するプロパガンダです。
地球上の子供たちが、そんな大人たちが動かしている今の世界をどう見ているのか。今後、子供たちの人格形成にどう影響されていくのかを考えると、大いに不安になります。
話題を変えます。
子供のウェルビーイングは、秋田が全国で最も高いという報道が反響を呼んでおります。ウェルビーイングは、経済的な豊かさのみならず、精神的な豊かさや健康までを含めて、幸福や生きがいをとらえる概念です。文部科学省が毎年実施している全国学力テストの質問調査のデータ分析から、「秋田の子供は幸福度日本一」との姿が浮かび上がったようです。
「自分には良いところがあると思う」という自己肯定感や、「将来の夢や目標を持っている」という自己実現、自分と違う意見について考えるのは楽しい」といった多様性理解、さらに「地域や社会を良くするために何かをしてみたい」という社会貢献意識といった各指標で、秋田の子供たちは全国1位。とりわけ社会貢献意識の高さは際立っていたそうです。
大変うれしく受け止めているのですが、その一方で、民間のシンクタンクが2023年に実施した「地域の希望調査」の暗たんたる結果が思い起こされ、複雑な心境にもなります。この調査では、全国の18歳以上の男女1万8千人余りを対象に、「地域の10年後は明るいか」「地域の未来を良くすることは可能か」などを尋ねたところ、秋田は全国最下位。希望を見いだせない地域であるという残念な結果が浮き彫りになりました。
調査の主体や手法が異なるので、一概に比較はできないとしても、傾向として子供と大人では大きな差異が生じていることに間違いはないでしょう。幸福度が日本一である子供たちが、大人年齢に到達した途端、幸せではなくなる。その差異、ギャップがどうして生まれるのかが、秋田の幸福度や地域の未来を考える大きな鍵となりそうです。
大人社会のウェルビーイングをどうやって伸ばし、高めていったらいいのか。これは、人口が減り続ける中でどのような豊かな社会を築いていくのかという、私たち秋田経済同友会がここ数年、議論の軸に据えている課題とも合致します。
先月、高知で開かれた全国経済同友会セミナーのテーマは、「幸せの国づくりは土佐の山あいより~ウェルビーイングな日本を目指して~」でした。ホストを務めた土佐経済同友会が2012年から取り組んでいる高知県民総幸福度調査では、「県民所得は低いが県民の65%が『幸福』だ」と回答しているといいます。幸福感を支えているのは、家族や健康、人の温かさといった非経済的な要因なのだそうです。秋田県民のウェルビーイングを考える上で大いに参考になりそうです。提言づくりに反映させてみたいものです。
さて、昨年10月、秋田市で経済同友会東北・北海道ブロック会議が9年ぶりに開かれました。おととしの創立30周年記念事業に続いて、2年連続の大きなイベントでありましたが、会員の皆さまのご協力のおかげで、成功裏に終えることができました。この場を借りましてお礼を申し上げます。参加した各地の同友会からは、再生可能エネルギーの将来像への理解が深まったという声や、当同友会の心温まるもてなしへの感謝が多く寄せられました。
次に、通常会員総会の開催を前に、同友会の委員会組織を再編したことをご報告いたします。これまで総務企画、広報交流、地域開発、観光開発、国際活動、道路整備促進、地域と農業を考えるという7つの委員会がありましたが、すでにご案内の通り、これを4つの委員会に再編しました。時宜にかなった多種多様な課題に、柔軟かつ、臨機応変に対応できる態勢とするための改編です。
総務企画と広報交流を合体して「総務企画委員会」に。観光と農業を統合し、産業全般の振興について調査研究する「産業にぎわい委員会」。従来の地域開発と道路を統合して、インフラ整備や再エネ、まち・森づくりなどを担当領域とする「地域づくり委員会」。そして地域開発の一部と国際活動を統合して、人材育成や人材の確保、DX,事業承継などを新たな担当領域とする「人づくり委員会」としました。
再編案は、平野久貴さんと私の代表幹事2人と、7人の委員長の皆さんと複数回協議を重ねて決めました。委員会名は、ひらがなを入れた柔らかな表現にしました。その名にふさわしく柔軟な発想と思考で、各種提言につなげていけたらなと考えております。
本日はこの後、活動報告や活動方針案、その裏付けとなる決算案、予算案などの議案審議に加え、任期満了に伴う理事・監事の選任案、常任幹事選任案など、議案が盛りだくさんであります。ご審議のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
また、通常会員総会終了後には、劇作家で兵庫県立芸術文化観光専門職大学学長の平田オリザさんから「本気の文化によるまちづくり」と題して講演していただきます。平田さんは母親が大館市のご出身で、秋田とは大変ゆかりの深い方です。
おととしの11月に神戸市で開かれた全国経済同友会代表幹事円卓会議に出席した際、平田さんが「演劇で人づくり街づくり」と題して講演されたのですが、この内容が非常に面白く、刺激的でした。本同友会からは私一人だけの参加でしたので、ぜひ会員の皆様にもお聞かせしたいと思い、平田さんに白羽の矢を立てた次第です。
結びに、本日の懇親会には、昨年2月まで当会会員でありました鈴木健太知事が、途中からでありますが、顔を出されます。大いに懇親を深めていただきたいと思います。本日は長丁場となりますが、最後までよろしくお付き合いのほどをお願い申し上げまして、私からのご挨拶といたします。ありがとうございました。
(2026年5月27日 通常会員総会)