
代表幹事・佐川 博之
秋田県の人口は昨年(2024年)7月、104年ぶりに90万人を割り込み、ピークだった1959年の135万人から36%も減少しました。国立社会保障・人口問題研究所は、県人口は2050年まで56万人までに減り、その約半数が65歳以上の高齢者になると推計しております。
少子高齢化の加速に伴い全国最速のペースで人口が減り、地域の持続可能性が問われる中で、地元経済会が果たすべき役割は、従前にも増して高くなっていると言わざるを得ません。
先の県知事選挙では、ことし2月まで当会会員だった49歳の鈴木健太さんが初当選を果たし、戦後7人目の公選知事に就任しました。
初の県議会に臨んだ鈴木さんは、上程した25年度一般会計補正予算案を「日本一持続可能な県の実現に向けた第一歩だ」とし、若者や子育て世代を主要ターゲットに据えた実効性の高い人口の社会減対策を展開すると表明しました。
これまでのリーダーが有効な手立てを打ち出せずにいた人口減、少子化対策を、自らが処する最大のテーマに据え、真正面から切り込む姿勢を表明したことに、知事としての本気度を感じ、期待しているところであります。
「母になるなら流山市。」のキャッチコピーで知られる千葉県の流山市は、井崎義治市長が導入したマーケティング戦略の有効活用で少子高齢化を脱却し、全国でも屈指の人口増加率を誇る自治体に生まれ変わりました。鈴木さんも当然その辺りを念頭に置いているのでしょう。県の企画振興部にマーケティング戦略室を新設することを表明しました。
しかしながら、人口減少は、県政の若きリーダー一人だけで解決できることではありません。「秋田には何もない」と思っている県民意識の改革や、若者をはじめ、万人の立場を尊重する寛容な社会への変革なしには、抜本的な解決策とはなり得ません。そうした改革の機運を醸成する役割を果たすのが、私たち経済人、経済団体の務めであります。
秋田経済同友会は、「しなやかな考察」と「果敢な行動」をモットーに、経済の諸課題について考察を深め、地域活性化に向けた政策提言を行う団体であります。昨年は第1弾として、農業従事者が減少しても、食料を安定供給できる環境を整えられるようにと、8項目からなる提言書を県に提出しました。涌井徹委員長を中心にした「地域と農業を考える委員会」がまとめたもので、スマート農業技術の活用や、コメづくり農業の再構築、規模拡大が限界に達している農業法人への新たな支援などを盛り込みました。
昨年来、各委員会がそれぞれの立場で人口減対策につながるような提言を目指して、各種勉強会などを開催しております。早い段階で第2弾の政策提言を打ち出していきたいと考えております。
ことし当同友会が総力を挙げて開催するのは、10月の東北・北海道ブロック会議であります。国内最先端を行く洋上風力発電事業を展開予定の本県を舞台に、「再生可能エネルギー」の将来像について、講演やパネル討論を通じて徹底的に掘り下げた議論を展開する予定です。会員の皆さまのご協力なしにはブロック会議の成功はあり得ません。一人一役の気持ちでご参加してくださることを願っております。
このほか、当会会員を全県に広げていくための地域懇談会の開催や、女性会員の増員など、主要な事業は継続して力を入れてまいります。
秋田経済同友会の会員資格は、県内の企業経営者としておりますが、企業や特定業界の枠組みを超え、一個人として活動を行うことを本分としております。財政面で独立しており、何者にも縛られない自由闊達な議論の場を設けているのが最大の特長です。今年も存分に議論を尽くし、秋田県、秋田県民が誇りを感じられる地域を目指してまいりましょう。
(2025年5月28日 通常会員総会)