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  • 新時代にマッチしたインフラ整備が必要 /第3回会員会、秋田河川国道事務所の 吉沢仁所長が講演

    令和2(2020)年9月17日 掲載
    令和2(2020)年9月17日 更新
    講演する吉沢仁所長

     本年度の第3回会員例会が8月4日、秋田キャッスルホテルで開かれ、会員34人が出席、国土交通省東北地方整備局秋田河川国道事務所の吉沢仁所長が「地域経済に資する公共事業のあり方について」と題して講演した。吉沢所長は公共事業の執行状況と新型コロナウイルス感染症を踏まえた公共投資に関する考え方も紹介。「新しい時代にマッチしたインフラ整備が必要だ」などと訴えた。





    ★グローバル化の中でどんな社会資本が必要なのか

     社会資本は移転が不可能な資産であり、一度作ったらしっかり活用し守っていかなければならない。多様化する社会の中でどのように生かしていくかが問われている。直面する課題として日本は▽少子高齢化▽多発する自然災害▽財政難―などを抱えている。加えて昨今は、想定できなかったコロナウイルス感染症の拡大もある。これらが私たちの進めている社会インフラ整備のハザードになっている。
     社会資本整備のストック効果としては、先に挙げた課題に沿えば、防災・減災は生活、経済活動の安定に、競争力・生産性の向上は継続的な雇用・税収に。そして、交流人口の拡大、定住人口の確保は地域の安定・活性化につながる。このような効果を最大限発揮できるようにしていかなければならない。
     平成9年以降の政府全体の公共事業関係費をみると、22、23年に大きく落ち込んでいるが、その後少しずつ盛り返しており、現在はやっと戻ってきた状態で7、8兆円程度になっている。直近の2年は防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策費も含まれている。

    ★GDPに対する一般政府総固定資本形成「IG」の割合

     近年3%程度と、主要先進国(G7)との比較では、同等の水準まで低下し、ほぼ10年横ばいで推移している。ちなみに、2017年はイギリス2.0%、アメリカは1.9%。
     また、公共事業関係費および社会保障関係費の推移をみると、社会保障関係費が増え続けている。これに伴い公共事業関係費、インフラ整備はキープするだけで大変。このバランスも大きな課題となっている。

    ★防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策(2020年度まで)

     防災のための重要インフラ等の機能維持に約3.5兆円、国民経済・生活を支える重要インフラ等の機能維持に約3.5兆円の計7兆円規模の事業となる。その中で、陸海空の交通ネットワークの確保に約2兆円を見込んでいる。土砂災害等に対応した道路法面・盛土対策、土砂災害等を回避する改良や道路拡幅などの対策を行っている。ほかに、津波や地震、豪雪などの対策も実施。県内では雄物川や子吉川の河道掘削などが行われている。
     全国的課題に対して、短期的に可能な対策を別枠で実施しているが、納税者に成果が見えているだろうか。最終年度だが、まだまだ必要性の再認識が必要。納税者の評価があれば、中・長期的な事業の財源確保につながる。

    ★秋田県内の取り組み

     国内の道路は約122万㎞あるが、高速自動車国道は約8,900㎞で0.7%にすぎない。 全国ではいまだにミッシングリンクが残る区間が多々ある。また、高速道路はあるものの日本海側では4車線化が進んでいない。また、県内には高速道路がつながっていない区間が3カ所ある。
     一方、高速道路ネットワークを補完する高規格道路については、国道46号の盛岡秋田道路は計画路線、国道105号の大曲鷹巣道路は候補路線として指定されているが、まだ未整備となっている。また、秋田港は機能強化が進んでおり盛岡都市圏への貨物量が増えている。さらに、仙北市には世界トップシェアの製品を扱う電子部品工場も立地しており、製品の搬送・出荷で国道46号は重要なルートになっている。

    ★i-Constructionの概要

     国土交通省では、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組み「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を進めている。
     調査・設計から施工・検査、さらには維持管理・更新までのすべてのプロセスにおいてICT技術の活用が進んでいる。ICT技術を取り入れることによって、一人一人の生産性を向上させ企業の経営環境を改善することができるし、建設現場に携わる人の賃金水準の向上を図るなど魅力ある建設現場にすることができる。さらに、死亡事故ゼロを目指し安全性が飛躍的に向上する。
     建設技能者は60歳以上が全体の約4分の1を占めており、10年後にはその大半が引退することが見込まれる。これからの建設業を支える29歳以下の割合は10%程度。若手入職者の確保、育成が喫緊の課題となっている、このためにもi-Constructionの取り組みが必要になる。橋やトンネル、ダムなどの公共工事の現場で測量にドローン等を投入し、施工、検査に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぐという新たな建設手法の導入も考えられる。従来の3Kのイメージを払拭して、多様な人材を呼び込むことで魅力ある現場に改善したい。
     秋田県は積極的で、五城目町での建設ICT総合研修拠点の取り組みが表彰を受けている。具体的には一連の工程に沿った研修を提供し、実践的な習得が可能になった。また、県外からも受講者を受け入れ広域的な人材の育成に貢献している。さらに、女性限定の研修を開催するなど女性の活躍推進にも寄与している。

    ★気候変動に対応した新たな防災・減災の取り組み

     河川の取り組みを紹介する。今まではしっかりした堤防を造って水があふれないようにすることを重視してきた。しかし、昨今は想定を超える災害がありいたちごっこになっている状況。せっかく造った堤防がすぐにあふれてしまうこともある。そこで、堤防を造ってハードで抑えるのではなく、県内でも造られている「かすみ堤」のように、堤防をあえて低くして水を集めておくような施設を地元と相談しながら造っている例もある。
     流域治水プロジェクトと銘打って今年度から実施している。例えば、気象情報をもとにダムの水を大雨の前に事前放流することもある。ダムと一言でいっても治水用もあれば発電用、農業用などいろいろあり、事前放流についてもいろいろな判断があるだろうが、昨今は防災についての理解が深まっている。
     県内では平成29年7月の水害に伴い、そのときの水害に対応できるように大仙市などで雄物川の治水整備を進めている。堤防を造ってはいるが、最近では想定外の雨量を記録することもあり決して安心はできないという思いはある。また、上流の整備が進めば下流に影響が出ることもあるので、秋田市の下流域では3カ年緊急対策として事業規模約15億円で河道掘削を行い、水が流れやすくなるようにしている。

    第3回会員例会

    ★再びケインズか

     コロナ禍の自粛の中で、将来はどうなるのか。資本主義の制度では「供給可能な財の量を下回る需要しか存在しない」。何もしないでいると慢性的な不況になる。不況に陥った場合、政府が公共事業を実施して不況から脱出するべきだ。また、失業している労働者がいて遊休している設備や機械があるなら、政府がそれらの生み出す生産物の使い手になる財政政策を求める声がある。
     コロナ禍により外出自粛、賃金が入らないのだから、政府による財政政策で財の生産量を増やせば国民の所得も増え、景気が回復する。例えば、政府が2兆円の税金を徴収して2兆円分の公共事業を行えば、国民の所得は2兆円増加し、景気にインパクトを与えることができる。
     上記のような旧来型の経済政策でいいのか、それとも新たな政策を打たなければならないのかいろいろな意見がある。

    ★コロナ(With or Post)時代の道路のあり方

     今起こっていることを整理してみる。今年のゴールデンウイーク(4月25日~5月6日)の圏域をまたぐ高速道路の利用交通量は小型車が前年比79%減、大型車が同14%減。小型車をみると政府目標の外出8割削減は達成している。ただし、大型車をみると各地をつなぐ物流は確保されている。
     人は社会的な距離に応じて物理的な距離を調整する生き物であり、移動によって社会的距離と物理的距離を縮めたり、遠ざけようとしたりする社会的規範がある。しかし、コロナ禍によりこの理念は排除され、強制的に距離をとることが求められる社会へ変化し、これまで密接だった地域の社会規範と社会距離の再設計が、道路空間の再配分を加速することになった。地方では、交通量が減少した幹線道路で車線の一部を歩行者と自転車専用にした例もある。秋田県でもできるのではないか。
     安全安心な地域は、経済を止めれば社会的距離の拡大で実現可能だが、大都市では難しい。地方都市の歴史的蓄積を生かしたまちづくりならば可能になるのではないか。適度な密度の中で地域活動とライフスタイルを維持できる秋田は安全安心な地域としての可能性が大きい。
     翻って、社会的距離が拡大したリモート社会は道路を変えるだろうか。リモート社会は良いのか、それとも社会の格差と分断を助長するのか。コロナ禍によるリモート社会を体験した今だからこそ判断できるようになった。情報は移動を代替するのかについて、これまでの研究者はインターネットと携帯電話による情報化は交通を誘発するとしていた。しかし、リーマンショック後、企業業績は上向いたが、非正規社員は増加し若者の外出率は高齢者を下回った。お金がなくなれば、リアルな移動は情報にとって代わられ、例えば、ファミレスでの会合よりもLINEでの語り合いが増えている。
     道路では、人流中心需要から物流中心需要に対応する必要が生じている。道路交通量は時間距離の2乗に反比例し、2地点間の人口に比例する。リモート社会では時間距離は限りなくゼロなので、理論上は道路を使った移動は情報に転換。移動の必要がなくなると地価は激変し、駅に近いオフィス需要はなくなるかもしれない。リモート化により、移動手段の一つである道路は大きな転換が必要になる。

    ★2040年度、道路の景色が変わる

     災害や気候変動、インフラ老朽化、人口減社会、ポストコロナの新しい生活様式などを踏まえ、道路政策を通じて実現を目指す2040年の日本社会の姿と政策の方向性を提案するビジョンを策定した。
     基本的な考え方は▽道路政策の原点は「人々の幸せの実現」▽デジタル技術をフル活用して道路を「進化」させ課題を解決する▽道路にコミュニケーション空間としての機能を「回帰」。5つの将来像として▽通勤・帰宅ラッシュが消滅▽公園のような道路に人があふれる▽人・モノの移動が自動化・無人化▽店舗(サービス)の移動でまちが時々刻々と変化▽「被災する道路」から「救援する道路」に―を挙げている。
     最後に、道路行政は▽日本全国どこにいても、だれもが自由に移動、交流、社会参加できる社会▽世界と人・モノ・サービスが行き交うことで活力を生み出す社会▽国土の災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全安心して暮らせる社会―を掲げ、持続可能な社会の姿と政策の方向性を目指している。

     道路も河川も秋田の地において、どういったことが進められるかを踏まえ、経済と密接に関連して考えていかなければならない。今後も皆さまの忌憚のないご意見をお伺いしたい。

    (文責:事務局)

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