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  • 県内食品の輸出への理解深める/県うま販課・櫻井氏が講演

    講演する櫻井氏
    講演する秋田うまいもの販売課の櫻井氏

    【第1回地域と農業を考える委員会】
    (令和3年1月15日、秋田ビューホテル)
     
     令和2度の第1回地域と農業を考える委員会が令和3年1月15日、秋田ビューホテルで開かれ、会員10人(代理を含む)が出席した。「秋田県における食品の輸出について」と題して、県観光文化スポーツ部秋田うまいもの販売課調整・食品振興班の櫻井慎也氏が講演。本県の農林水産物・食品の輸出統計や戦略・事業、課題のほか、台湾への輸出事業や今後の取り組みも紹介した。

     担当理事の西村紀一郎副代表幹事に続き、涌井徹委員長が「コメの消費は年々減っているが、今年はコロナの影響でさらに落ち込むとみられる。また、コロナを機にコメの状況は変わるかもしれない。コメ+αで輸出を増やさなければならない。本日の講演を提言に結び付けたい」とあいさつ。引き続き櫻井氏の講演に移った。

     講演の主な内容は次の通り。
    1.政府の輸出戦略および輸出統計について
     農林水産物・食品の輸出額は2012年(4497億円)から2019年(9121億円)にかけて2倍以上に伸びたが、政府の「輸出拡大実行戦略」では目標を2025年までに2兆円、2030年までに5兆円としている。
     日本は国内市場依存型で、輸出割合は他国と比較して低い。主な品目は調整食料品(スープやケチャップ、ドレッシングなど)、ペストリー(小麦生地の菓子など)、清涼飲料水などの多様な加工品。パック米飯を含むコメなどの日本らしい産品の輸出比率が小さいことが課題だ。
     戦略としては海外市場で求めるスペック(量、価格、品質、企画)の産品を専門的・継続的に生産・販売するマーケットインの体制が求められる。また、輸出重点品目27品目(牛肉やリンゴ、清酒、みそ・しょうゆ、米・パック米飯など)および対象国を選定し、積極的な支援を行う必要がある。

    2.秋田県の輸出統計について
     県の食料品・飲料等製造出荷額は全国44位で、1401億円。このうち、輸出の割合は0.5%ほど(7.3億円)しかない。特に加工品の輸出が少ない。ちなみに、加工品輸出総額のうち、約60%が稲庭うどんで、しょうゆ・みそ、水産加工物、菓子類が続く。

    3.秋田県の輸出戦略・輸出事業について
     戦略としては、東アジア・東南アジアの市場は急激に成長しており、秋田の食の輸出の大きなポテンシャルがあるし、輸送コストも比較的安い。戦略商材を明確化した商品提案を行うとともに、現地に合った食べ方も提案する。また、船便の混載についても検討を進め、輸送コストの低減を図る。
     最重要品目は清酒、稲庭うどん、米。重要品目としてパック米飯やみそ・しょうゆ、その他発酵食品、秋田牛、リンゴなどが挙げられる。台湾、中国、韓国を重点国・地域とし、フランス、タイにもチャレンジしたい。

    4.秋田県の輸出の課題について
     輸出できる良い商材は持っているが、▽輸送コスト(国内・海外)が高い▽輸出手続きが良く分からない▽海外市場の情報がない▽外国語に対応できるスタッフがいない―などの悩みを持っている企業もある。輸出量を増やすために、県ができることは輸出のハードルを下げるための土台(プラットホーム)づくりではないか。

    5.台湾輸出事業(事例)について
     大潟村あきたこまち生産者協会との物流効率化の取り組みを紹介。秋田港から台湾へ輸出することにより、コストカットおよび流通の効率化を図った。仙台港や東京港から輸出する場合と比較して、秋田港から輸出する場合は約30%の国内輸送費の削減につながった。
     これに伴い、台湾での商品の販売価格が日本での販売価格の2倍ほど(従来は3倍)に抑えられ、台湾の消費者が買い求めやすくなった。また、県内の企業が輸出するということで、安心して商品を任せられた。

    6.今後の秋田県における取り組みについて
     以下の4点を重要と考えている。
    (1)輸出に取り組みたい企業へのきめ細かいサポートの継続
    (2)輸出に取り組む事業者の発掘と商品開発の支援
    (3)一過性のイベント実施ではなく、継続的な取り引きになるような取り組みを実施
    (4)輸出相手国ごとに物流の効率化を図り、プロモーションと連携できる仕組みづくりを行う

    県うまいもの販売課の櫻井氏が講演した第1回地域と農業を考える委員会
    櫻井氏が講演した第1回地域と農業を考える委員会

     講演後、委員からは「輸出については、商社の中抜きが多く利益をあげることができない。期間限定であろうと、県に商社のような役割を担い下支えしてほしい。また、担当は産業労働部なのか農林水産部なのか観光文化スポーツ文化部なのか、窓口をころころ変えないでほしい」「輸出に興味を持っている企業はたくさんある。食品流通の合理化および輸出の促進のための県の協議会の現状はどうなっているのか」「クボタグループは白米の輸出に取り組んだことがあるが、気温が高い地域では品質が悪くなり評判が落ちた。そのため香港とシンガポールで現地精米をすることになった経緯がある」などの質問、意見があり、櫻井氏は「商社的な機能については、今後取り組んでいかなければならない課題と考えている。いろいろなご意見を参考にしたい」などと答えていた。   
     一方、講演終了後、令和2年度活動報告ならびに令和3年度の活動方針について協議。次年度についてはこれまでの活動方針の継続を決め、具体的には涌井委員長と事務局が打ち合わせ、委員に提案することにした。

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