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  • 治療は時間との勝負/若年性心筋梗塞をテーマに講演会

    令和3(2021)年4月30日 掲載
    令和3(2021)年4月30日 更新

     若年性心筋梗塞をテーマにした令和3年度初の健康講座が4月16日、秋田ビューホテルで開かれ、会員29人(代理を含む)が出席した。秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学の渡邊博之教授が特徴や予防について語り「がんとは異なり、急性心筋梗塞の治療は時間との勝負。一刻も早く受診、診断、治療を」と訴えた。

     健康講座は一昨年まで実施していたビジネスマン健康達人講座に替えて、会員からのアンケートで希望が多かったテーマで開催しており、昨年11月には「毎日の食事が健康を作る~少しの工夫で食生活の改善を~」と題して、管理栄養士の講話を聴いた。今回が2回目の講座でテーマを若年性の急性心筋梗塞に絞った。初めに、主管する地域開発委員会の田口清光委員長が「前日まで元気だった若い社員が心筋梗塞や大動脈解離などで突然亡くなることが身近でも起きている。前兆があるかどうかなどもうかがいたい。経営者の私たちとしては健康経営の視点から、自らはもちろん社員の健康に目を配らなければならない」とあいさつ。引き続き、渡邊教授が講演した。主な内容は以下の通り。

     平成27年の都道府県別平均寿命をみると、秋田県は79.51歳で46位。最下位が青森、45位が岩手とワースト3が北東北3県で、いずれも平均寿命が70歳代となっている。また、平成29年の死亡原因内訳では、がん(27.9%)と心疾患(15.3%)、脳血管疾患(8.2%)で計50%を超えている。秋田県民の平均寿命を改善させるためには、がんだけではなく循環器疾患も克服していかなければならない。さらに、入院患者の疾患別推計をみると、本県の人口減少は著しいが今後15年、循環器疾患の入院は減少しない。だからこそ予防や医療体制の充実に強く取り組んでいかなければならない。

    講演する秋田大学の渡邊博之教授
    講演する秋田大学の渡邊博之教授

    1.循環器とは? -心筋と冠動脈-
      循環器とは、器官の一つで血液を体内で輸送し循環させる働きを持つ。いわば物質輸送システムで、その駆動ポンプである心臓はすべての臓器に血液を送っている。「心停止=人間の死」とすれば、心臓は人の生死を決めている臓器であり、冠動脈は心筋に栄養を供給している血管。

    2.狭心症と心筋梗塞の発症
      狭心症と心筋梗塞はともに冠動脈の病気。狭心症は血流が悪くなり、心筋梗塞では血流がストップする。
      動脈硬化による冠動脈障害のパターンには、プラークが形成され内腔狭小化・閉塞が起きる冠動脈硬化と、冠動脈が攣縮(れんしゅく)する冠攣縮がある。また、動脈硬化は中高年になってから起こると思われがちだが、初期病変は10歳から、30歳で半数に動脈硬化が出現している。「まだ若いから‥」という考えは油断大敵だ。「人は血管とともに老いる」と言われる。
      狭心症と心筋梗塞のリスク因子としては▽肥満▽高脂血症▽高血圧症▽耐糖能異常▽喫煙-が挙げられ、これらが虚血性心疾患をはじめとする動脈硬化病変を招く。ただし、これらの危険因子はコントロールが可能でもある。

    3.若年性心筋梗塞とその特徴
      突然死の原因としては心筋梗塞・狭心症(50~60%)、心筋症(30~35%)、遺伝性不整脈(10%)などがある。また、心筋梗塞から心臓突然死のパターンとしては、高血圧や脂質異常症、糖尿病で喫煙する人が動脈硬化になり、心筋梗塞・狭心症から突然死するということがある。ちなみに、国内では平成26年に、20~40代の若年層が虚血性心疾患で1000人以上亡くなっている。
      若年者と高齢者では、心筋梗塞の発症様式や、なりやすさにどのような違いがあるのか。高齢者と異なり、若年者では胸痛の自覚がほぼ100%。若年者が心筋梗塞を起こした場合、無症状はあり得ない。若年性心筋梗塞の冠攣縮タイプでは、日中の労作では誘発しないで夜間から早朝の安静時に発症することがある。この場合、喫煙やアルコール摂取、過換気が誘因する。

    4.心筋梗塞から命を救う
      冠攣縮タイプでは薬物療法が一般的だが、冠動脈硬化タイプの心筋梗塞では血管を通して心臓の治療ができるPCI(冠動脈形成術)が施される。PCI施行で急性期死亡率は減少する。
      また、心筋梗塞では心臓の筋肉細胞が一部死んでしまう。心筋細胞や神経細胞は分裂・増殖できない細胞なので、心筋梗塞治療は時間が勝負となる。世界的な目標時間は再開通まで90分以内。治療目標を発症から120分以内の再灌流達成とした場合、病院に来るまでの時間を短縮したい。急性心筋梗塞の治療は、がんとは異なり時間との勝負。一刻も早く受診を、一刻も早く診断を、一刻も早く治療を訴える。
      秋田県の現状はPCIができる認定医・専門医が青森、岩手に比べ多くはない。また、秋田市は充足しているが、県南と県北では不足している。特に、県北(大館・鹿角)と湯沢の循環器医療の充実を最優先しなければならない。

    健康講座「若年性心筋梗塞について」
    健康講座「若年性心筋梗塞について」

    5.心筋梗塞にならないために
      狭心症・心筋梗塞のリスク因子の都道府県別患者数(人口10万人に対して)をみると、本県は高血圧性疾患6位、高脂血症12位、糖尿病5位と比較的上位となっている。予防にはこれらの改善が求められる。
      高血圧については高齢化と食事・食習慣、外気温の影響などが挙げられるが、全世代で全国平均を上回る食塩摂取を見直さなければならない。特に、若い世代からの予防が必要だ。また、高血圧になりやすい生活習慣として食塩摂取のほか、喫煙、肥満、過剰な飲酒、ストレスなどが挙げられる。予防策としてはウオーキングやランニング、水中歩行などの有酸素運動が効果的で、毎日30分以上の有酸素運動を10週間続けると降圧効果が出る。
      また、外気温の影響については、本県よりも寒い北海道で脳梗塞死亡が少ないことで分かるように、暖房環境の充実が必要になる。さらに、重要なのは県民に高血圧予防を啓もうすることだ。
      一方、脂質異常からの動脈硬化を防ぐ方法としては、本県出身の遠藤章氏が発明したスタチンがある。スタチンは悪玉コレステロールを低下させ、狭心症・心筋梗塞の発症を抑える効果がある。さらに、PCIをせずにスタチンでプラーク退縮を得た例もある。検診に行って、そして受診を勧める。
      講演後、出席者からは①PCIの空白地域をなくための努力に敬意を払いたい。しかし、湯沢地区で進まない理由は何か②若い人の健康診断の再検査の状況について③サプリメントの効用について④県は県北、県南、中央の3圏域で医療充実を進めているが、循環器医療についてはどうか―などの質問が出された。これに対し①医師ならびに病院、行政などいろいろなファクターが絡んでいるが、経済支援は必要②他県に比べて低い傾向にある。健診を受けた人の意識づけが弱いのだろう③効果が著しいのであれば医薬品になっている。積極的に薦める医師は少ないだろう④循環器医療の特殊性は緊急性にある。3圏域で限られた時間での対応、インフラ整備が可能かどうかに集約されるのではないか―などと答えた。

    (文責:事務局)

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