秋田経済同友会は6月23日、秋田市のANAクラウンプラザホテル秋田で令和4年度第2回会員例会を開き、イオン(千葉市)の大門淳顧問(グループエリア戦略・開発担当)が講演した。秋田市外旭川地区で検討されているまちづくり事業で市が事業パートナーに選んだイオンタウン(千葉市)の構想について説明した。
構想によると、事業の対象地は、卸売市場が建っている市有地とその周辺の水田などを合わせた51.1万平方メートル。ここに、卸売市場(9.5万平方メートル)を移転新築するほか、サッカースタジアム(8.2万平方メートル)を新設し、商業・娯楽・健康増進・農業体験・住宅などの民間施設(33.4万平方メートル)を配置する内容。
大門氏は、産業・観光・スポーツ・福祉など幅広い分野で、県内外の企業・団体約40社と協力して事業を推進していくことを強調した。卸売市場の機能強化策として、観光客を呼び込む「場外市場」をつくる計画を紹介。スタジアムは、天然芝のピッチを屋根付き建物の外にスライドさせることができて、サッカーの試合がないときは他の用途に使える「次世代型スタジアム」にしたいとした。商業施設は、従来型ショッピングセンターとは異なり、芸能イベントにも対応できるシネマコンプレックスや若者・家族連れが季節や天候を問わず楽しめる娯楽施設を備えた「アクティブワンダーゾーン」にしたいとした。交通アクセスについては、利用者の依頼を受けて乗り合い送迎する「デマンド交通」を導入する計画を紹介した。また、県立大学と連携してスマート農業を創出したり、AI(人工知能)などの技術を活用してエリア内の電力供給を最適化したりする考えも披露した。
構想によると、新卸売市場の完成は2025年、全体のオープンは2027年を予定している。総事業費は1,074億円。フィデア情報総研(秋田市)の試算によれば、着工から開店までの経済波及効果は758億円で、開店後は毎年734億円の効果が見込まれるほか、開店時には7,320人の雇用創出が期待できるという。
大門氏は秋田市新屋出身の69歳。イオンの前身であるジャスコに入社。マックスバリュ東北の常務取締役開発本部長を務めた後、2011年から18年までイオンタウンの社長を務めた。講演の冒頭、自らの経歴を紹介しつつ、2011年の東日本大震災では店舗を避難所として提供した経験を振り返った。「今後は、ショッピングセンターにとどまらない、地域に資する複合的なまちづくりをしたい」などと構想策定の思いを語った。
秋田市は、公募で選んだイオンタウンの提案内容をさらに精査。農地法や都市計画法関連の各種変更手続きの準備を進めながら2022年度、外旭川地区の「まちづくり基本構想」を策定する予定にしている。
この日の例会は、観光振興委員会が所管。講演に先立って竹島知憲委員長があいさつした。会員52人が出席した。 (文責:事務局)