秋田経済同友会は7月24日、2023年度第2回会員例会を開き、全国健康保険協会(協会けんぽ)本部の六路恵子参与が「健康経営を進める上での男女共同参画ならびに女性の活躍について」と題して講演した。六路氏は、国や大学がこれまで進めてきた研究の成果をひも解きながら「女性の健康課題を正しく知ることは、労働生産性の向上や企業業績の向上に結びつく」と述べた。
講演に先立って、例会を主管した地域開発委員会の佐々木創太委員長が挨拶。「本年度の活動方針の一つとして『健康経営から進める健全経営』を掲げており、本日は、データによって裏付けられた健康づくりの話を聴く機会を持った。会員企業の経営にプラスになる有意義な時間にしたい」と述べた。
六路氏は千葉大学看護学部を1980年に卒業し、東京都や埼玉、長野両県の保健所に勤務。1993年に協会けんぽの前身の社会保険健康事業財団に入り、現在に至る。この間、厚生労働省や東京都、日本医師会の健康づくりに関する各種検討委員を歴任、現在は東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員でもある。
講演で六路氏は「女性には、ホルモンの働きによって心身に不調をきたす特有の健康課題があり、仕事への悪影響や労働生産性の低下をもたらす現状を知っておく必要がある。例えば、月経随伴症状による労働損失は4900億円に上るという経済産業省の試算がある」などと述べた。また、健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する力(ヘルスリテラシー)を高めている人は、体調不良の時でもより効率的に仕事を進めることができるという研究データを紹介。「女性の健康課題に対応し、女性が働きやすい社会環境の整備を進めることが生産性の向上や企業業績の向上に結びつく」と強調した。
男女ともに働きやすい職場づくり、職務満足度の高い職場づくりを考える手段として、「仕事の忙しさ・難しさ」と「裁量・権限」の関係を示す「仕事要求度―コントロールモデル」を紹介。その中で「仕事の量が多かったり要求度が高かったりしても、自らの裁量で行える業務に携わっていると職務満足度が高く、長期的には雇用の安定性にもつながる。しかし、裁量が少ない中で困難な仕事に立ち向かっていくことはストレスとなり、健康障害を招いてしまう。頑張っているのに報われないことも同じことで、こうしたストレスを抱えた人たちの将来の冠動脈疾患発症率は、ストレスのない人に比べて2~6倍高いという研究結果がある」と警鐘を鳴らした。最後に、「企業における女性の活躍には経営トップの強い信念と指導力が必要で、その信念は、倫理観としての平等主義だけではなく、女性の活躍が企業の持続的成長に不可欠だという信念でなければならない」という社会学者の言葉を引用して講演を締めくくった。