一般社団法人秋田経済同友会は5月28日、令和7年度通常会員総会を秋田市の秋田キャッスルホテルで開いた。6年度決算、7年度活動方針、常任幹事選任など5議案を原案通り承認した。
総会には会員151人のうち128人(委任状56人含む)が出席した。佐川博之代表幹事が挨拶で本県の人口減少に触れ、「秋田には何もないと思っている県民意識の改革や、万人の立場を尊重する寛容な社会への変革なしには抜本的な解決策とはならない。そうした改革の機運を醸成するのが、私たち経済人、経済団体の務めである」と述べた。
また、秋田経済同友会は「しなやかな考察と果敢な行動をモットーに、経済の諸課題について考察を深め、地域活性化に向けた政策提言を行う団体。昨年は、農業従事者が減少しても、食料を安定供給できる環境を整えられるようにと8項目からなる提言書を県に提出した。委員会がそれぞれの立場で人口減対策につながるような提言を目指して勉強会などを開催しており、早い段階で第2弾の政策提言を打ち出していきたい」とした。
10月23日に秋田市で開く第48回経済同友会東北・北海道ブロック会議については「当会が総力を挙げて開催する。洋上風力発電事業を展開する本県を舞台に、再生可能エネルギーの将来像について、講演やパネル討論を通じて議論を掘り下げる。会員各位の協力なしには会議の成功はない。一人一役の気持ちで参加してほしい」と呼びかけた。
議事は、佐川代表幹事が議長を務め、議事録署名人に吉川悟、栗谷卓臣の両氏を指名。6年度決算は平野敬悦監事の監査報告の後、拍手で承認。7年度活動方針案については、各委員長が提案し、東北・北海道ブロック会議秋田大会の関連費用などを盛った予算案とともに承認された。主な活動は「働きやすい職場づくりを念頭に男女の家事育児負担の在り方を検討する」「地域産業を活性化する人材育成の方策を考える」「食やスポーツと観光を融合させ、交流人口の拡大につなげる取り組みを進める」「秋田で学び働く外国人に第2のふる里と感じてもらえる地域づくりへの提言をまとめる」「高速道路が全面開通することによるメリットを確認し、他県とも連携する」「国民の主食を安定確保するため、コメ増産へ転換する必要性を提言する」など。また、常任幹事には、北都銀行取締役の伊藤新氏を選んだほか、本総会で退任する斉藤永吉代表幹事を顧問に委嘱した。

特別講演会は、パネルディスカッションの形で実施した。テーマは「県外出身の起業家から見た秋田の課題と展望」。パネリストは、五城目町の森林で宿泊施設を営むなど森林資源を活用するコンサルタント「このほし」の小原祥嵩社長(兵庫県出身)、北秋田市で地域の食材を使った新商品を開発する「アニーク」の斎藤美奈子代表(神奈川県出身)、国際教養大在学中から秋田市で映像制作に取り組んでいる「アウトクロップ」の栗原エミルCEО(京都府出身)が務めた。コーディネーターは秋田魁新報社の松川敦志統合編集本部長。
ベトナムと東京を拠点に仕事をしていた小原氏は、家族と過ごす環境を考えて移住したという。秋田の人口が減少していることに関しては「仕事を進める上でデメリットはない。マーケットは秋田ではなく世界。事業の根は秋田、挑戦の目は世界」と述べた。斎藤さんは元地域おこし協力隊員で、任期満了後も北秋田市阿仁地区で暮らしている。「ここにいるだけで地域の人たちに感謝される。限界集落と呼ばれている地域だが、私の行動で何か変わるかもしれないというワクワク感がある」と話した。栗原さんは「国内で仕事をする場合、秋田から来たというだけで、注目される。また、海外で仕事をする場合、東京も秋田も日本としてくくられる。デメリットはない」と話した。
秋田の県民性については「寒い土地に暮らしているためか、昔から辛抱強いと言われている。良いことではあるが、変化の波が押し寄せた時も我慢してしまえば、変わることができずに弱点にもなる」といった指摘もあった。最後に小原氏は「まだ私たちのビジネスは小さい。これからたくさんの雇用を生んで、納税して、さらに地域を巻き込んでいくための努力をしたい」と締めくくった。

夕方からの懇親会には72人が出席。ことし2月まで当会会員だった鈴木健太知事は来賓挨拶で「県庁内が知事に対しても遠慮なくモノが言える雰囲気に変わった」ことを紹介しながら、人口減少問題に力を注ぐことをあらためて誓った。平野久貴代表幹事の主催者挨拶の後、秋田市の青木巌産業振興部長が沼谷純市長の祝辞を代読。新谷明弘副代表幹事の発声で乾杯し、1月以降に入会した会員6人が一人ずつ挨拶した。中締めは、伊藤満副代表幹事が務め、盛会の中でお開きとなった。

令和7年度の役員は以下の通り(敬称略)
代表幹事(理事) 佐川博之、平野久貴
副代表幹事(理事)新谷明弘、伊藤満、鈴木信夫、西村幸彦
専務理事事務局長 鹿川公利
監事 今野邦義、平野敬悦
常任幹事 石井広樹、石黒寿佐夫、伊藤新、井上さおり、大友進、小野泰太郎、小畑宏介、
片桐大地、神成俊行、後藤敬太、佐々木創太、清水隆成、白石光弘、田口清光、
竹島知憲、立田聡、千葉利昭、藤澤正義、松田悦子、松村讓裕、涌井徹