秋田経済同友会は12月11日、秋田市のホテルメトロポリタン秋田で会員例会を開いた。秋田県立大学木材高度加工研究所の高田克彦所長(教授)が「地域資源の価値変換を通した地域社会の未来創造」と題して講演。「本県には豊かな森林や特徴ある大学がある。こうした大学と官民が連携し、森林を生かした新しい地域社会をデザインしていきたい」と述べた。

県立大、国際教養大、秋田公立美術大と県、研究機関、民間企業が連携して進めるプロジェクト「森の価値変換を通じた、自律した豊かさの実現拠点」が昨年、科学技術振興機構(JST)の支援プログラム(COI-NEXT)に採択されたことを受けて、リーダーの高田所長からプロジェクトの概要を聞いた。プロジェクトは、県内3大学の「技術力」「教養力」「デザイン力」と、民間企業の「社会実装力」を結集して、秋田の豊かな森林資源に新たな価値を生み出す研究開発を推進する。支援プログラムの採択によって、向こう10年間で約20億円の研究費が交付されるという。
研究は、「空間」「木材」「まち」「技」「人」の5項目からアプローチ。このうち①「森と空間」では、間伐の進捗や林道からの距離といった「木材生産適地判定」を基に山林の価値を評価。林業施策の立案や民間投資に備える。②「森と木材」では、木材の力学性能や環境性能を研究し、市場が求める材料への改良を進める計画で、トヨタ車体と連携しながら自動車部品への利用に照準を当てる。③「森とまち」では、大規模な建物の木造木質化を可能にする部材や構法を開発し、「まち」におけるカーボンストックの推進を目指す。④「森と技」では、県内の木工事業者のネットワークを広げ、「世界一軽い木工椅子」など革新プロダクトの製作に取り組む。⑤「森と人」では、森林資源を活用して起業する「地域起業家」とその支援者の組織「ソウゾウの森会議」を作り、世界観やノウハウを共有する。
高田所長は、秋田の森の経済的・文化的・教育的な価値を引き出す行為を「森の価値転換」と定義。また、経済優位性や利便性に根差した豊かさではなく、自らが作り上げる地域で暮らす誇りに根差した豊かさを「自律した豊かさ」と定義。森の価値転換を通じて、自律した豊かさを追求することの重要性を訴えた。
講演会は、地域開発委員会が企画。講演に先立って佐々木創太委員長が挨拶し、会員約40人が聴講した。
