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  • 森林資源の循環利用を進めよう/第5回会員例会、東北森林管理局長が講演

    令和元(2019)年11月11日 掲載
    令和元(2019)年11月13日 更新

     本年度の第5回会員例会が8月29日、秋田キャッスルホテルで開かれ、会員32人(代理を含む)が出席した。林野庁東北森林管理局の小島孝文局長が「いまどきの林業と木材利用の新たな展開について」と題して講演、「地域資源を循環的に活用する林業の成長産業化と国産材の利用に期待が高まっていることと、国産材利用の拡大は林業・木材産業だけでなく秋田県の経済発展に貢献する可能性が高いことを、県民はじめ経済人の皆さんに理解してほしい」と訴えた。
     初めに主管した地域開発委員会の田口清光委員長が「森林は街なかにいると遠い存在かもしれないが、山が守られていないと、最近頻発している災害に脅かされる。まさに森林の能力が落ちると人間の生命にかかわる。川上から川下まで林業の動きをじっくり聞きたい」とあいさつ。引き続き、小島局長が講演した。主な内容は以下の通り。

    講演する小島孝文局長

    ◆地方創生と林業の成長産業化
     2014年度にスタートした地方創生(国の総合戦略)の中間年に当たる2017年度、既存の取り組みを加速するための新展開として、地方創生に資する大学改革などとともに、地域資源を活用した「しごと」づくりも取り上げられ、若者の雇用創出や農林水産業の6次産業化に伴う市場規模の拡大などを目標に掲げた。日本は国土の7割が森林という世界有数の森林国。林業については、ICTによる木材の生産管理などのイノベーションを推進策とした。
     

    ◆なぜ林業の成長産業化なのか
     戦後造成された人工林は1000万haに及び、有効活用すると同時に計画的に再造成すべき時期になっている。また、林業は住宅や建築業のみならずエネルギー産業や製造業、運輸業、卸売・小売業など、すそ野の広い産業に貢献している。
     林業・木材産業の成長産業化のポイントとしては、川上から川下にわたる各段階における現状と課題を的確に把握し、新たな木材需要を創出することが必要だ。これと同時に、森林資源の再造成・育成のための資金を山元に還元し、「伐(か)って→使って→植える」という国産材利用のサイクルを構築し、林業・木材産業を、地域資源を活用した持続的な産業として育成することで、地域の雇用確保と経済活性に貢献しなければならない。

    ◆日本の林業・木材産業の現状
     国産材の木材自給率は2002年に18.8%と最低を記録したが、2017年は36.2%と徐々に増えている。やや明るい兆しがあるものの、海外に比べると伐出コストが高く、立木価格が低いなどの問題があり、競争力の強化を図ることが喫緊の課題となっている。
     このため、ハーベスタやタワーヤーダなどの高性能林業機械の導入や、新たな機械・器具の開発を進めている。また、イノベーションの推進としては▽記憶からデジタル記録の森林管理▽3K林業からの解放―などに取り組んでいる。

    ◆木材利用の新たな展開
     木造関係の規定については、大断面木造建築物や木造3階建て共同住宅を可能にしたり、CLTを用いた建築物の一般的な設計法を策定したり、避難安全性や構造安全性などが確認できたものについては建築基準法などを改めている。
     これに伴い木材を活用したいろいろな建築物ができており、ことし2月には仙台市にCLTを床材として使用した10階建て高層建築もできている。また、来年の東京オリンピック・パラリンピックでは、新国立競技場や有明体操競技場、選手村ビレッジプラザなどに木材を積極的に利用している。さらに、スーパーゼネコンが高層木造建築に積極的に取り組んでおり、木材の利用が進んでいる。

    ◆木材利用が広がる背景
     森林・林業分野はSDGs(持続可能な開発目標)に定める8つの優先分野のうち▽生物多様性、森林・海洋の環境保全▽省エネ・再エネ、気候変動対策、循環型社会―など4分野に貢献できる。また、木材を利用することは、地球温暖化防止など環境に対する効果、雇用の場創出につながるほか、ストレスの軽減など人(利用者)に対する癒し効果も得られる。木材利用は「環境良し、地域良し、人に良し」の三方良しになる。

    ◆秋田県の森林・林業について
     本県の林業・木材産業が持つ成長産業化へのポテンシャルは高い。第1に23万8千haという全国一の民有林スギ人工林面積を持ち、林業生産額は110億円と1次産業の1割を占めている。第2に製材や集成材、合板、製紙工場、木質バイオマス発電施設など木材をフル活用する多様な木材加工企業が集積している。第3に林業大学校で実践研修を経た若い技術者などが新規就業しており、次代の林業・木材産業を担う若い人材を養成している。
     一方、森林資源の循環利用に向けた木材需要のさらなる創出として、県の木材利用促進条例がある。具体的には▽木材を優先利用する県民運動の展開▽海外市場への販路開拓▽中・大規模建築や土木分野での新たな利用促進▽木造建築を提案する建築人材の育成―を紹介。最後に「植える、育てる、収穫する、適材適所で使うといった森林資源の循環利用で環境に優しい社会づくりをしよう」と結んだ。

    林業と木材利用の新たな展開について学んだ第5回会員例会

    ※参考
     小島孝文(こじまたかふみ)氏
     昭和62年、東京大学農学部林学科卒業。同年農林水産省入省(Ⅰ種・林学)林野庁林政部林政課、平成9年九州営林局屋久島営林署長、12年林野庁に復帰、造林保全課ほかの課長補佐等を歴任。26年林政部木材産業課課長、28年森林整備部整備課課長を経て、29年林野庁東北森林管理局長。

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